【4技能】 外国人とおしゃべりすることが『スピーキング』?

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『英語はリズミカルに音読しよう!』シリーズはちょっとお休みして、このところ話題の『4技能』について自分の考えを述べてみたいと思います。

まず確認ですが、『話すこと(スピーキング)』『聞くこと(リスニング)』『読むこと(リーディング)』『書くこと(ライティング)』の 4つ の『技能』を一般に『4技能』と言うかと思います。「英語はこれら 4つ の『技能』をバランスよく学習しようね!」とよく言われます。そこは自分も全面的に賛成です。しかし、「これからの大学受験では『4技能』が重要になってきます。今までになかった『スピーキング』が入ってくるんです。『だから』(オンライン英会話などで)外国人と話す練習をしなければいけないんです」というのには反対です。

誤解しないでいただきたいのは、特定の人たちにケンカを売っているわけではない、ということです。『スピーキング』というワード(特に、2020年度以降にそれまでのセンター試験に代わって行われる大学入学共通テストで導入される、いわゆる『4技能試験(英語の民間検定試験)』の文脈で登場するもの)をきちんと定義しませんか、ということを言いたいんです。

いわゆる『4技能試験』の『スピーキング』ですが、自分としては『スピーキング』というワードではなく "Vocalizing" というワードを使って区別した方がいいと思っています。"Vocalize" は『発声する』くらいの意味と思っていてください。いわゆる『4技能試験』の代表格である『英検』について考えてみましょう。二次試験の面接が『スピーキング』にあたるでしょうか。もし英検の二次試験が『外国人と話す能力』を問うものであれば、上述の『(オンライン英会話などで)外国人と話す練習をしなければいけない』という主張は正しいです。しかし、英検の二次試験はそんな能力は問われません(英検以外のいわゆる『4技能試験』のいずれもそんな能力は問いません)。

『4技能試験』について、多くの国公立大学は (出願要件として)CEFR(セファール)の A2 レベルを要求しています。CEFR の A2 レベルというのは 英検準2級合格レベル になります。英検準2級の二次試験で何が問われるかご存じですか。① 約 50語 の『パッセージ』を音読すること、②『パッセージ』の内容についての質問に答えること、③ イラスト A に描かれた5人が何をしているか現在進行形で答えること、④ イラスト B に描かれた人物の状況とその理由を答えること、⑤『パッセージ』やイラストに関するトピックについて受験者の意見を求められるのでそれに答えること、⑥ 日常生活の身近な事柄に関して受験者の意見を求められるのでそれに答えること、の 6つです。これら 6つ のどこで『外国人と話す能力』を問うているのでしょうか。面接官と受験者で丁々発止(?)のやりとりがあるならまだわかるのですが、英検の二次試験の質問と応答は一方通行です。受験者の応答に面接官がつっこむことはありません(英検で面接官のツッコミがあるのは 1級 だけです)。

自分に言わせれば、二次試験は『ペーパーテストの音声バージョンに過ぎない』です。紙(文字)ではなく人間が音声で発問し、鉛筆(文字)ではなく人間が音声で応答する、ということです。音声による発問を理解するのは従来のリスニングとなんら変わりありません(CD か 生身の人間かというだけです;コンピュータベースの二次試験ならなおさら CD と変わりません)。『鉛筆ではなく人間が音声で応答する』というのは "Vocalizing" 『発声すること』というワードの方がしっくりきませんか。

こう言うと「答えを書くのと発声するのとでは違う」と反論されそうですが、自分としては何が違うのか教えて欲しいです。文法を理解して書くことができるけどそれが発声できないのであれば、『発声する』練習をすればいいだけだと思いませんか。これまでこのブログでは(できるだけ)正しい発音・リズムで発声するための練習をしてきましたが、外国人と話す練習ではなかったはずです。

決して "Vocalizing" だけできればよくて『外国人と話す能力』なんていらない、と言っているわけではありません。むしろ『外国人と話す能力』というのでは足りず、『外国人とコミュニケーションをとる能力』は必須だと考えてます。この能力には『スピーキング』というワードではなく "Communicating" というワードをあてた方がいいと思っています(学習指導要領が目指しているのもこの  "Communicating" でしょう)。『外国人と英語でコミュニケーションをとれるようになること』は英語を学習する目的の一つですが、いわゆる『4技能試験』の『スピーキング』ではそこまでは要求されていない、ということです。2020年度以降に大学受験をする世代のお子さんをお持ちの保護者様におかれましてはそのことを心の片隅に置いておいていただければ、と思います("Communicating" についてはいつか詳しく述べたいと思います)。

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